「貯蓄から投資へ」は進んでいくのか

「貯蓄から投資へ」
昨今このスローガンをよく耳にします。
政府もNISAやiDeCoといった優遇政策
国民へ投資機会を促していますが、
これには「将来もう国だけでは国民を守れないから、自分の身は自分で守ってね」
という国からのメッセージも含まれています。
 
なぜかと言いますと
多くの方がご存知のように
日本では少子高齢化が著しく進行しており、
現状の社会保障のままでは破綻すると言われているからです。(完全に無くなる可能性は少ないと思いますが)
 
それゆえにこれからは国を当てにするのではなく、
お金を自分自身で生み出していく(貯蓄から投資へ)という意識がより大事になってきます。
 
しかしこんな先行きが危うい状況の中でも
「貯蓄から投資へ」の流れはなかなか進んでいません。
いったい何が投資への足枷になっているのでしょうか?
 

歴史の過程で「貯蓄」文化が根付いた?

 
そもそも日本人って貯蓄が好きですよね。
「最近貯金が尽きてさ、家計が苦しいんだよね」
「頑張って貯金して夢のマイホーム買おう!」
こんな会話が日常的に結構ありますよね。
つまり「貯蓄」が日常生活に染み付いている状況なんです。
諸外国と比較しても
(米国)13.7%
(英国)24.4%
(日本)51.9%
[sanko href="https://www.fsa.go.jp/singi/kakei/siryou/20170203/03.pdf" title="家計金融資産の現状分析−金融庁" site="家計金融資産の現状分析−金融庁"]
家計の「現金・預金」の比率が圧倒的に高いのが分かります。
 
なぜこれほどまでに「貯蓄」文化が定着しているのか。
これには日本がこれまで歩んできた歴史と関係しています。
例えば
 
江戸時代の質素倹約
戦時中の貯蓄の奨励
 
挙げだすとキリがないですが
こういった歴史を経験し、知らず知らずの内に僕たちは
お金を使わないことが美徳
という潜在意識が形成されていったのです。
 
また近代で言うと
バブル崩壊前までの日本では
勉強し→良い大学に入り→大企業に入り→結婚し→家を買い→子供を育て→定年まで同じ会社に勤め→退職金でローンの返済をし→年金生活
という方程式がありました。
これを支えていたのが
学歴主義 年功序列 終身雇用 インフレ 不動産価格の上昇 労働人口 銀行金利の高さ
このおかげで、一生懸命勉強し良い企業に入れば年功序列で給料は右肩上がり、
家を買えば不動産価格も上がり、余ったお金を貯金すれば6パーセント以上で利回りがでる。
そして年金は想定どおり払われて老後も安心という人生を送れたのです。
もっとシンプルに言えば、一生懸命仕事をして、家を買い、貯蓄をしてれいればOK
リスクをとって投資なんてしなくても誰でも一財産が築けた時代だったのです。
リスクをとらずにただ働いて貯金して家を買う。
このバブル世代の親の考えが僕たちの世代にも色濃く受け継がれているため、
日本人は「貯蓄」のループから抜け出せていないのです。
 
もう1つは
お金の知識(ファイナンシャルリテラシー)の欠如です。
日本人の投資に対するイメージは
 
リスク(損失)が怖い
お金持ちが余ったお金でやるもの
なんだかとっつきにくそう
 
こういったイメージが蔓延っています。
間違ってはいませんが、正解でもありません。
 
まず資産運用で言うところのリスクはそもそも「損失」ではなく
「価格の変動幅や不確実性」を表しています。
また今では信託報酬の安い投資信託や数万円程で買える株もたくさんあるので
金持ち以外にも投資の門戸は広く開けられています。
とっつきにくそう というのもただ「投資」について知らないだけで
イメージで判断している場合がほとんどだと思います。
 
これらは全てお金の知識の欠如やずれから生じてくるものです。
日本では義務教育にお金の教育が組み込まれておらず、先にも学ぶ機会は基本的にないため
人生でお金について学ぶのは主に親からのみになります。
しかしその親もきちんとしたお金の教育をうけておらず
自分の子供に対して
「貯蓄」については大事なものだと教えるものの、
「投資」に関しては危ないものとして教えます。(少なくとも僕の親はそうでした)
この無知の連鎖が続いている限り、
政府が進める「貯蓄から投資へ」の舵取りは難航するでしょう。
 

どうすれば「投資」習慣が根付くのだろうか?

 
金融庁が進めているNISAやiDeCoなどの優遇政策を利用しない手はないだろう。
例えば2018年の1月から始まった積立NISAは、金融庁の厳しい審査を通過した
商品がラインナップにあがっているから投資の入り口としては入りやすいと思う。
また昨今ではAIを利用したロボアドバイザーやネット証券も整備されているのだから
わざわざ昔みたいに証券窓口に行かなくても
スマホ片手に運用できてしまう時代であり、投資を始める準備や環境の整備はだんだん進んできている。
 
だが本質的な問題はやはり日本人の「投資」に対する考え方であり、お金の知識の欠如です。
ここを変えない限りいくら技術が進歩しフィンテックが進み便利になったとしても
この現状は変わることなく、「投資」の習慣が日本に根付くことは一生ないでしょう。
 
これを解決するには
義務教育にお金の教育を組み込んだり、もっとお金の知識について学ぶ機会を
国や自治体が積極的に提供していく必要があると思う。
だから政府には今の優遇政策の継続に加えて、
お金の教育といった分野にも力を入れてやってほしい。
 
もちろん「投資」が全てとは限らないが、
日本に「投資」習慣が根付いていけば、
「投資」を通じて自分自身で労働収入以外のお金を稼ぐ方法を会得し、
そうすればある程度国になんか頼らなくても生きていけるようになるため、
不安な将来に怯えずに生きていけるのではないでしょうか。